2008年03月03日
地元新聞連載に注目『挑まれる沖縄戦』『がじゅまるファミリー』

春先になると、出版社には原稿や企画の持ち込みが多くなる。自費出版の相談とか。春は地中に蠢いている虫たちも地上に出てくる、なんていうから、人の思考・行動にもなんらかの影響があるかもしれない。
一転して実際の県産本の新刊となると、実は例年だとこの時期、比較的おとなしく刊行点数も少ないのだが、今年はかなり賑やかそうです。特に、新聞社系の出版物! ということで、今回は、永遠のライバル、沖縄タイムス社と琉球新報社のそれぞれの春のイチオシ本をとりあげてみませう。
沖縄タイムス社が満を持して刊行したのが、『挑まれる沖縄戦「集団自決」・教科書検定問題報道特総集』(沖縄タイムス社編)。去年沖縄県全体で盛り上がった「教科書検定問題」は、地元の新聞社が行った報道キャンペーンが牽引していった部分がかなりある。そしてその問題の根は深く、去年突然起こったことではない。この本は、二〇〇五年から沖縄タイムス紙上で始まったキャンペーン報道のドキュメントを再編成し論点をまとめたものだ。まずその総量に驚く。その多くは僕も新聞で読んだはすだが、こうして一冊にまとめられることにより、改めてこの問題が今の沖縄県民にとってより重要なことであることを実感させられる。 内容では個人的に「ll ルポ・証言」に目がいった。これは岩波・大江裁判・「集団自決」問題でクローズアップされた、慶良間諸島の「集団自決」について、当事者である住民の証言をまとめたものだ。僕の両親もこの島々で「集団自決」の当事者であることもあって、連載中も欠かさず読んでいた。
この住民の証言をまとめる、ということで想起されるのは、五七年前、沖縄タイムス社が出した『鉄の暴風』である。戦後、沖縄でまとめられた最初の本である。まだ沖縄戦の記憶も生々しい頃、沖縄タイムスの記者が住民達の声を取材しまとめたものだ。「集団自決」という言葉もこの本から生まれた。今まで続く沖縄戦のイメージの源流となる本だ。そして今でも本屋に並んでいるロング・ベスト・セラー。今回の『挑まれる沖縄戦』は、その続編と考えてもいいかもしれない。同じタイミングで岩波新書から、沖縄タイムスの謝花直美記者による『証言 沖縄「集団自決」 慶良間諸島で何が起きたか』も刊行されているので、合わせて読んでおきたいところだ。
一方、琉球新報社からは、朝刊で二〇〇四年から好評連載されている四コマ漫画「がじゅまるファミリー」の第一巻が刊行された。作者のももココロさんは、普通の沖縄県民だったのが、突然一念発起「地元新聞の四コマ漫画家になる」と宣言して、一年間作品を描きためて琉球新報社に送ったところ、採用となり連載が決まった、という、このご時世でほんとにこういうことってあるんだぁという展開で、漫画家になった、100パーセント・メイド・イン・うちなーの漫画家である。その作風はローカルに徹してほのぼのとあたたかい。本人の性格そのままなんである。何度かお会いしたことがあるのだが、なんとも味のあるやさしい人柄に、関心してしまった。ちなみに、男性であります。似顔絵を描いてもらったことがあるのだけど、僕でも30パーセントアップでかわいらしくいい人になっていました。さらにいうと、一度作品にも登場させてもらった。自慢である。その切り抜きはいつも手帳に挟んでいます。
今回は二〇〇四年に連載されたものをまとめているのだが、僕も、そして一緒に読んだ中一の娘も、くすくす笑いながら読んだ。おもしろです。そして新聞連載らしくその時々の時事ネタもあって、ああそういうばそういうこともあったなぁと思い出させてくれるのもいい。たまに平和に関するネタで、ほろりとくることもある。こういうのって、多分「肝心 ちむぐくる」というのでしょう。
沖縄タイムス社と琉球新報社、地元新聞社の対称的な二冊だけど、今の沖縄県産本の元気さをアピールできる、上等な県産本でありました。(文・新城和博)
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html

プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
→そして、沖縄の人気blogランキングはこちら
今回は二〇〇四年に連載されたものをまとめているのだが、僕も、そして一緒に読んだ中一の娘も、くすくす笑いながら読んだ。おもしろです。そして新聞連載らしくその時々の時事ネタもあって、ああそういうばそういうこともあったなぁと思い出させてくれるのもいい。たまに平和に関するネタで、ほろりとくることもある。こういうのって、多分「肝心 ちむぐくる」というのでしょう。
沖縄タイムス社と琉球新報社、地元新聞社の対称的な二冊だけど、今の沖縄県産本の元気さをアピールできる、上等な県産本でありました。(文・新城和博)
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プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
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この記事へのコメント
沖縄の新聞社の持つパワーには、
尊敬の念すら感じます・・・
権力に拮抗して、庶民生活の視点から、
報道し戦う姿勢・・・・
内地新聞社が、
はるか昔に喪失した報道の原点・・・・
尊敬の念すら感じます・・・
権力に拮抗して、庶民生活の視点から、
報道し戦う姿勢・・・・
内地新聞社が、
はるか昔に喪失した報道の原点・・・・
Posted by パイパティローマ at 2008年03月05日 10:25
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