「沖縄県産本ニュース NOW&THEN」
先日、「輝け! 2007年沖縄県産本大賞」の選定が行われた。沖縄県の出版に関する賞としては、沖縄タイムス社が主催する「沖縄タイムス出版文化賞」が県内に広く知られているのだが、こちらは、その存在を知るものは、あまりいない……だろうなぁ。
実は「沖縄県産本大賞」とは、県内の出版社が数多く参加する「沖縄県産本ネットワーク」の事務局を中心とする編集者数名が、年の初めに突発的に集まり、前年に出版された「県産本」の中から数点選び出し、この本はとっても上等だった、よく出来ている、おもしろかったと、かってに一方的にいろんな賞をあげるというもので、権威的なものは一切はないが、まぁ面白いじゃないの、というものだ。県産本編集者が、自分たちの県産本を褒めるという、いわゆる「どぅーふみー」な企画である。
なぜこれがよく知られていないかというと、発表される場が『沖縄県産本ニュース』という、これまた知る人ぞ知るフリーペーパーだからだ。ネットワーク会員の出版社が出した新刊紹介を主な内容としていて、一応隔月刊だ。編集者や関係者による寄稿エッセイや、その時の沖縄出版界の話題に関するコラムや版元探訪などの企画物が載ることもある。そしてもちろんフリーペーパーには欠かせない! 四コマ漫画も付いている。創刊は1994年で、2008年1月に56号が出たばかりだ。これまで、ほぼ621点の本を紹介している。登場した版元は、たぶん48社。「県産本」を世間にアピールすべく、県内外の書店や関係各位に配っているのだが、皆さんは目にしたことがあるだろうか。県内のだいたいの書店には店頭に置いてもらっているはずなのだが。見つけたら人見知りせず、遠慮せず、もらってください。
しかし「沖縄県産本ニュース」も、もう14年目になるのだなぁ。ふとバックナンバーを読み返してみた。
記念すべき第1号には、なんとあの中江裕司監督がエッセイを書いている。しかも編集者として。そうなのだ、実は中江さんは、かつてあの伝説の沖縄ローカルの月刊漫画雑誌『コミックおきなわ』の編集長だったのだ。
その頃は、パナリ本舗という自分たちの会社で『GARVE』という雑誌を出していた。今、桜坂劇場などに関わるプロデューサー・Nさんが編集長だった。当時、国際通りにフェスティバル・ビルというのがあって(現OPAビル)、そこで映画を上映したり、ライブをしたり、著名人のトーク・ショーなどができるスペースがあって、パナリ本舗はその運営にも関わっていたはず。たしかその一環に発行されていたのが、『GARVE』だった。誌名の由来は、ガープ川である。あの頃、国際通りの「沖縄ジァンジァン」が閉まり、「リウボウ・ホール」では、ウルトラマンの父・金城哲夫展が開かれていたなぁ。『GARVE』はそうした沖縄サブカルチャーのディープな部分にこだわった特集を組んでいた、かなりかなり褒めていえば、『Switch』のような雑誌だった。何号まで出していたかなぁ……。なるほど、考えてみると、今ある桜坂劇場というのは、その時やろうとしていたことを展開しているのだなぁ。
最初に紹介されている県産本は、『アロハ 沖縄人PW』渡久山朝章著、ひるぎ社の本である。「おきなわ文庫」シリーズでよく知られ沖縄出版界に名を刻んだひるぎ社も、今はない。しかし「おきなわ文庫」の幾つかは、今も那覇空港の売店に並んでいる。
我がボーダーインクはというと、シマーコラムマガジン『Wander 14 ふぁむれーうたぬぐとぅく号』が紹介されている。「沖縄雑誌名鑑ふくぁんじぇんぶぁん(不完全版)」が特集だった。当時たくさんあった沖縄関係の雑誌を例によってなんでもかんでもコラムで紹介していた。『Wander』は、2005年、38号を持って終刊した……。
さすがに14年前のことを振り返ると、こうなってしまうのだなぁ。これまでの歩みをざっと振り返ろうとしたが、どうやら無理があるようだ。またいずれの機会にちゃんと整理してみよう。
みなさんも、書店などで「沖縄県産本ニュース」を見かけたら、ぜひ手にして持ち帰ってください。14年後には、とってもいい資料になっていることでしょう。(文・新城和博)
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html
プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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この記事へのコメント
ガーブ川由来の「GARVE」って、今でも手に入りますか?!
読みたいです・・・
ガーブ川界隈を探検徘徊するのが好きな風人です・・・
読みたいです・・・
ガーブ川界隈を探検徘徊するのが好きな風人です・・・
Posted by パイパティローマ at 2008年02月06日 11:11
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