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嘉手川学のryuQ100味・12月号『トゥンジージューシー』

トゥンジージューシー
『ジューシー食べてトゥンジービーサを吹き飛ばそう』

 早いもので、気が付けば今年もあとわずかである。
 世の中では忘年会やクリスマスパーティーなどで浮かれまくっている人もいると思うけれど、何の因果かわしら商売には「年末進行」という、年末年始の社会の休みを想定して、いつもより多めに、そして長めに仕事をこなさなければならないシステムが構築されており、トナカイのように赤鼻で酔っ払うアンちゃんやオジさんのようにくだを巻き、街を徘徊しているわけには行かず、ただひたすら年末進行の原稿を書いてあるのである。
 まったくもって年末の酔っ払いはうらやましい、あ、いや、妬まし、あ、ち違った、恨むべき、あちがう、憎むべき存在である。

 そんなわけで、年末の酔っ払いに関する妬みや嫉みの話は置いといて、いよいよ今年も新暦では最後の月の12月、いわゆる師走である。ところで話は変わるけど、沖縄では「心配する」ことをウチナーグチ(沖縄語)で「シワスン」という、このことを良く覚えていてね。ボクが小学生のとき、親父に「何で12月は師走というの」と聞いたとき、親父は「12月は冬休み前だから仕事が忙しくなり、みんなが仕事がちゃんとできたかどうか心配するわけ、シワスルからシワス。心配でシワスル師走と覚えていたらいいよ」といわれたのである。ボクは師走の語源を知るまで、「師走はシワスルから師走」だと本気で3年以上信じていた。

トゥンジージューシー ま、そんな思い出深い師走であるが、師走の行事はといえば「トゥンジージューシー」である。「トゥンジー」とは冬至、「ジューシー」とは炊き込みご飯や雑炊のことをいう。かつては12月22日の冬至になると、各家庭で「トゥンジージューシー」を作り仏壇に供え、一家の健康を祈ったあと、家族でジューシーを食べたものである。ところで、沖縄の行事でジューシーが出るのが2回ある。そのうちの一つが「トゥンジージューシー」で、もう一つが旧盆の初日、ご先祖様をお迎えする日に食べる「ウンケージューシー」で、ボクは勝手に二大ジューシー日と呼んでいる。

 この二大ジューシー日のジューシーだが、同じジューシーではあるがレシピは若干違う。もちろん地域や家庭によっても違いはあるが、ボクの家は生粋のナーファンチュ(那覇人)なので、標準的な那覇のジューシーだと思ってもらいたい。まず、「ウンケージューシー」は茹でた豚肉とシイタケ、ニンジン、そして重要なポイントとして生姜の葉を入れ炊き込むのである。生姜の葉が入ることでほんのりと香ばしくなり、また、生姜の香りが邪気を払い、ご先祖様と一緒にきた餓鬼やヤナムン(悪霊)などにジューシーを食べられないようにするためである。それに対して「トゥンジージューシー」は茹で豚肉とシイタケ、ニンジンは一緒だけれど、ターンム(田芋)を入れ炊き込むのである。また、「ウンケージューシー」が炊き込み御飯風のクファジューシー(ホロホロジューシー)しかないのに、「トゥンジージューシー」はクファジューシーと雑炊タイプのヤファラージューシー(ボロボロジューシー)の2つのタイプがある。ヤファラージューシーには豚肉とターンムと無地と呼ばれるターンムのズイキが入っている。
嘉手川学のryuQ100味・12月号『トゥンジージューシー』
 沖縄で冬至のころに北風が吹き、寒くなることを「トゥンジービーサ」という。ちなみに「ビーサ」とは「寒い」というウチナーグチの「ヒーサン」の変形活用である。「トゥンジージューシー」に入れるターンムにはカリウムやカルシウム、鉄分、ビタミンAやCを含み、胃腸を元気にし寒さに弱った体力をつけるといわれているので、「トゥンジービーサ」から本格的な冬に入る前に元気になれるよう食べる、昔のウチナーンチュの知恵である。

 ところで、沖縄では最近、レトルトの「ジューシーの素」がスーパーなどで売られている。ヤファラージューシーではなく炊き込み御飯タイプのものだが、これが下手な家より数十倍も旨く、また、最近やたらと増巷に増えた沖縄料理店のような店のジューシーと同じくらい旨い(ということはその店もジューシーの素を使っている?)。

 ボクのウチでは毎年、女房が二大ジューシーを作っているが、今年は仕事が忙しいので作れないという。悔しいけれどボクは「ジューシーの素」にひと手間、ふた手間加えた頓知の聞いた「トンチージューシー」を作ろうと思ったのであった。

嘉手川学のryuQ100味・12月号『トゥンジージューシー』
筆者プロフィール:嘉手川 学(かでかわまなぶ)
フリーライター、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。沖縄ネタならなんでもOKで特に食べ物関係に強い。現在も『月刊おきなわJOHO』で食べ物コーナーを15年以上掲載中。
著書、編著、共著に『沖縄大衆食堂』、『笑う沖縄ごはん』、『泡盛『通』飲読本』(各双葉社)など多数ある。今年になって共著で3月に『沖縄離島のナ・ン・ダ』(双葉文庫)と『もっと好きになっちゃった沖縄』(双葉社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)が発売中。


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Posted by ryuQ編集室 at 2007年12月17日   00:00
Comments( 0 ) 琉球百科シリーズ
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