2007年12月07日
伊是名島「しまあかり」Jimamaライブ

沖縄県北部本部半島の運天港からフェリーで約1時間、島尻郡伊是名村。伊是名島は沖縄本島の最北端辺戸岬と殆ど同緯度にありながらなぜか沖縄最南端の島尻郡に属している。明治12年の薩摩置県により琉球藩が廃止になり、沖縄県となってから翌年に那覇役所に併合され、その後の明治29年に島尻郡に編入されたという。
戦前までは、隣の伊平屋島と合わせて「伊平屋」という行政区で括られていたが、昭和14年の分村許可指令により、伊是名村が誕生することになる。
その伊是名の名前が付いた伊是名集落は、島の南端の集落で碁盤の目のように街区が整理され、フクギや珊瑚の塀で守られた赤瓦の古民家が今でも数多く残っており、沖縄の原風景を体感できる県内でも貴重な集落となっている。

なかでも、伊是名集落の奥にある「銘苅家住宅」は、琉球王朝、第二尚氏の尚円王の叔父の子孫で、代々地頭職を続けた銘苅家の屋敷であり、当時の上級氏族の邸宅の造りがそのまま残されている。
尚円王は、伊是名の農家の生まれながら、1470年から400年以上に亘って19代も続く第二尚王統を開いた人物で、今でも伊是名の人々の大きな誇りになっている。
「銘苅家住宅」は、明治31年に一度補修工事が行われ、戦災を免れて保存状態も良く、1977年に国指定重要文化財に指定されたが、建築された年代は役所でも詳しい事は分からないという。門前から見上げる屋根や壁の線と面の美しさや、その重厚ながら質素な造り、首里城と同じ技法と言われる石垣など、他の古民家群と一線を画している。

その「銘苅家住宅」で、伊是名島を本拠地とするNPO法人「島の風」(代表:納戸義彦氏)によって「しまあかり」というイベントが催された。島の宝である「銘苅家住宅」をローソク行灯でライトアップし、その仄かな灯りの中で静かな優しいコンサートを開催するという。出演アーティストは、ji ma ma.。
ローソク行灯は「島の風」の呼びかけで島の小中学生や住民の方々、ボランティアスタッフで650基の行灯が2ヶ月前から準備され、試験点灯を繰り返して改良し今の形になった。
そしてその行灯で照らされるのは、「銘苅家住宅」と伊是名集落の赤瓦住宅群を縦横に走る道路で、延べ733mに及ぶ光の道が作られた。

フェリーが着く仲田港の南西に位置する伊是名集落へは専用のシャトルバスで向かう。着いたころには陽が落ちた直後のアコークローな時間帯だ。すでに行灯は灯され、暮れ行く空との対比が美しく、一気にしまあかりの世界へ放り込まれた。
道の両側に置かれた行灯でぼんやりと光る道を、顔の見えない黒いシルエットとなった人々が歩いて行く。
行灯に照らされたフクギ並木が妖しく美しく、やがて陽はとっぷりと暮れ、集落を散歩するうちに、そろそろ十四夜の月が昇ってきた。
「銘苅家住宅」のお庭に入り、行灯が灯された部屋を見学すると畳や掛け軸や柱がろうそくの灯りでゆらめいている。
この家が建てられた頃の夜はこんな風にひっそりとそこかしこに闇があったのだろう。
暗い縁側に紋付を着て座っているのは、銘苅家の子孫の方々だという。

曇がちな空に月はいよいよと冴え、大きな冠をまとって昇っていく。
舞台袖には今夜ji ma maさんと共演する伊是名小学校の少女たちが待機している。そこへji ma maさんが木戸をくぐって現れた。
広い銘苅家の庭を埋め尽くした300人程の観客に「緊張するぅ」と子供達が言うと、彼女は「お姉ちゃんもいつも凄く緊張するんだよぉ」と少しおどけて子供達の緊張をほぐす。
そんなほほえましいやり取りを交わすうちに開演の時間。
1曲目はji ma maさんと子供達で「想い文」。“ほろり ほろり”と繰り返される子供達の歌声とji ma maさんの少しハスキーな声が古い家に染み込んでいく。
曲は進み、父親との幼い頃の想い出を唄った「でいご」。

客席は暗く、唄われるやさしい声を聴くうちに彼女が独り深い軒先から月に向かって唄っているかの様な錯覚に陥りそうだ。
ときおり道路の行灯を吹き消すほどの風が吹くが、会場は石垣と人垣でそれも遮られ、ろうそくの灯を揺らす程度で、そのゆらゆらと揺れる灯が古い民家に様々な表情を与えている。
やがて最後の曲は、今度は小学生たちが一人ひとり行灯を手に現れて「でいご」のロングバージョン。最初は子供達だけで唄われ、ji ma maさんはステージ横にしゃがんで聴いていた。
舞台袖では、先生達がリズムを取るようにゆっくりと手を振る。
ローソク行灯と銘苅家住宅、そして伊是名の自然や人々、集落の佇まいが相まって、図らずもこれ以上無い様な演出効果をもたらして1時間余りのコンサートは終わった。
そして「島の風」代表の納戸氏の満面の笑顔が今夜の大成功を物語っていた。
NPO法人「島の風」は、「島のこしが島おこし」のスローガンの下に、伊是名島の身の丈に合った島興しの活動を進め、近年では住む人の居なくなった古民家の再生事業に取り組んでいる。
内地企業の大きな資金に頼らず、島の自然環境や伝統、文化を守り伝える事で伊是名の良さを後世に残していく、ボクはこれがひとつの正しい島興しの姿だと思った。そして来年もまた来ようと考えていた。
(レポート: てんもり、編集: KUWA、取材協力: NPO法人 島の風)
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