2007年06月06日
琉球奇譚・映画『アコークロー』インタビュー前編

沖縄映画・沖縄ドラマといえば、青い空、青い海、癒し系の優しい楽しい人々が明るいタッチで描かれることが多い中、岸本司監督(沖縄県名護市出身)は、あえて明るい面の沖縄とは対極にあるもう一方の沖縄を描いた、今までとは違う沖縄映画として注目される『アコークロー』。
沖縄らしい“癒し”の部分はあくまでも“モチーフ”としながら、元来、沖縄が持つ土着性、風土、空気から自然に発せられる「生(せい)のエネルギー」の力強さ、キジムナーやユタなどが登場するスピリチュアルな沖縄の精神サイトを“生きる”世界観として表現したという岸本司監督。
撮影はすべて沖縄県内(ほとんどが糸満市内)。カメラマン、スタッフ、衣装、音楽など製作に携わるほとんどを沖縄で作る“メイドイン沖縄”にこだわり、今までにない沖縄ならではの精神世界をホラーを通して表現する、琉球奇譚・映画『アコークロー』が6月9日より沖縄では那覇の桜坂劇場から公開(東京6/16〜、大阪6/23〜公開)。
その公開を前に、この映画が初の長編映画監督デビュー作品となるという新進気鋭・岸本監督へ、直撃インタビュー。
(※映画オリジナル・特製ラベル泡盛ボトルの読者プレゼントもあります/記事後半にてご案内)

——沖縄映画といっても今までとかなり違う感じの映画が出来上がりましたね。
岸本監督:はい。方向性として違う形をとりました。今までは沖縄というと、沖縄の音楽が流れていて、「なんくるないさー」という言葉があって、みんな優しくて、癒しの沖縄が全面的に出ているというのが多くの沖縄映画になってきましたが、自分としては「癒し」や「なんくるないさー」が持つ意味はもっと深くて、人間が苦しみぬいたあとの到達点にあるものと思っているのです。
例えば、「なんくるないさ」といえるのも、たとえば戦争で苦しみ、深く傷ついた沖縄の人達がそれでも生きるために、なんとしてもはいあがり立ち上がってきたときに、「なんくる」という精神が涌きあがってくるような感じではないかと思っているのです。
つまり、どんな最悪の状況でも力強く前に向かうために「なんくるないさ」というエネルギーがあったととらえているのです。
だからよく描かれるような明るく簡単な「なんくる」の表現ではなく、自分では、苦しんで地獄におちていくぐらいの人達が、ほんのわずかな小さな、かすかな光を求める感じの切実感があるのです。
ですからこの映画も「テーマは癒し」なのですが、それはモチーフとしておき、今までのおおらかな沖縄とは違う手法で描こうとホラーになりました。
——製作にあたってスタッフ、キャストなどは沖縄であることにこだわったとか?
岸本監督:これまでの映画は東京など外からスタッフが来て沖縄でロケとなり、製作するのが普通でしたが沖縄のスタッフで作ることにこだわりました。本当の県産品映画を目指しました。キャスティングは役柄で選考しますので主役には人気モデルとして活躍中の田丸麻紀さんが初主演映画作品での抜擢となりましたが、脇を固める役者には沖縄出身の注目の新人俳優・尚玄さんやベテランの吉田妙子さん、地元で人気の劇団より山城智二さんなど沖縄の俳優さんにも出演してもらい、沖縄ならではの持ち味のいい魅力が出ていると思います。
またカメラマンの大城学(沖縄出身)さんと僕は長編映画は初めての取り組みだったのですが、これまでも彼とは自主映画をはじめたくさん一緒に仕事をしていますので、今回も互いに信頼を置いて進めることができました。
また映画製作において大変重要な仕事であるラインプロデュサーとして初めてご一緒しました鶴見真琴さんは今までの「沖縄映画製作」ではできなかったことで、スタートから最後の最後の編集完成カンパケまで携わるという貴重で重要な仕事をしていただきました。
これは沖縄映画史上初の快挙なんです。記念すべき素晴らしいラインプロデユーサーが誕生となりました。
——すごいことですね! 監督はつまり最初から最後まで、沖縄で完成させることにもこだわっていたのですか?
岸本監督:はい、仕上げまで沖縄で作ると決めていました。
つまり今までできなかったのですが、沖縄でも映画は最初から最後の仕上げまで全部作れるという形をちゃんと証明したかったんです。自分のためだけでなく
沖縄で映画を作る人達にも広く自信をもってのぞめるようにとおもっています。
本来は助手が何人もいるのが当たり前の立場であるラインプロデューサーですが、鶴見さんは助手もなくフル回転で一人でしっかりがんばってくれました。すごいことをやってくれました。この実証ができたことは沖縄映画史に残ります。
もう完パケまで、沖縄でも映画は仕上げまで作れますよと自信をもって言えることになりました。
——すばらしい嬉しいニュースですね。ところで女性としては出演者の衣装も気になるのですが、すべて衣装も沖縄だと聞きましたが?
岸本監督:そうです。飾らない普段着の沖縄がでてきます。かりゆしウエアやTシャツなど普通の沖縄を表現しました。
——沖縄の生活の中にあるファッションも楽しみです。さて監督さんはこの映画をどういう風に見て欲しいですか?
岸本監督:飾らない普段着の沖縄を描きました。たとえば変に沖縄の方言も意識してとりいれてはいないので、もともと出来る人は方言をつかっていますし、そうでない人はそのままに役柄に取り組んでもらいました。なにごとも普段のままでいい—無理をして方言を取り込むということはしませんでした。
ホラー映画ですが、ストーリーは犯罪もからみ、今までにない沖縄映画です。映画では善悪の判断問題を描くのではなく、「生きる力」を描くことに重点をおきました。生きる強さを表したかったんです。
それはなぜかというと、沖縄にきて「癒される」という多くの人たちの、その癒される気持ちはどこでそうなるのかを考えたのですが、それはおそらく、沖縄の土着性、風土、空気感から自然にある生きるエネルギーを感じとったからだろうと思うのですね。
たとえば木をみても沖縄の木には生(せい)、生きる執着心があると思うのです。がじゅまるの木など亜熱帯ならではの生のエネルギーが感じられますよね。
この映画ではそんな生きる力を描きたかったので沖縄での撮影が適してると思ったんです。是非、田丸さんの生き延びかた、生きる力を見てもらえたらと思います。
——それから『アコークロー』というタイトルですが
岸本監督:沖縄の方言で夕暮れ時という意味の言葉ですが、沖縄ではマジムン(化け物)が出る時間帯ともいわれますし、トワイライトゾーンのようなあやしい感じやどこか不思議な感じの響きもいいかなと。
それに僕が“映画用語”で一番美しいとおもっている言葉に「マジックアワー」というのがあるんですが、面白いことにこれがアコークローと同じような時間帯の表現に使うんですよ。
——いろいろあるのですね。そういえば外国語のようでもあり、何語かなと思うかたもいるでしょうね?
岸本監督:そうですね。
また僕は沖縄の作家・宮里千里さんの作品が好きなのですが、千里さんの最初のエッセイがたまたま『アコークロー』というタイトルなんですよ。これも縁かなと自分の最初の長編映画のタイトルにもいいかなーと千里さんにも電話しまして許可もいただきました。
——そうでしたか。いろんな素敵な縁もあっていいタイトル名になったですね! ところで監督自身はそんな夕暮れ時に不思議な体験や霊的な体験がこれまであったのですか?
岸本監督:それは残念ながら何もないです。もし逆に体験があったら恐くて製作できないのではと想像します。ホラーといっても映画はファンタジーなので想像で作るのが面白い作業で魅力なんですよ。
——なるほどそういうものですか。さて、ホラー映画ということで気になるのは表現される恐さですが
岸本監督:がんばりすぎまして(苦笑い)。“PG-12”指定になりました。
(※12歳未満の方はなるべく保護者が同伴して下さいという指定)
これは映画の表現に対しての名誉の指定だと思っています!お子さんはご家族と一緒にご覧ください。
——かなり恐いシーンもあるのですか?
岸本監督:たとえば世代によって違うのですが、沖縄では昔、悪さをすると怒ってカマを持って追いかけてくるおじさんがいたりしました。また、友達同士で「カマ」を持って遊んだ子供時代があったんですよ。沖縄って「カマ」が案外身近にあったんです。それでこの「カマ」を映画の中でも沖縄らしいリアル感になるように表現にいれました。
また僕は霊体験が無いからかもしれませんが、幽霊というのは、脳がみせているひとつの機能だと思っています。
つまり何かの罪悪感があるから恐怖のものとして罪の意識で見えるもので、脳が幽霊をみせている、機能的作用なのだと考えています。
「癒しの沖縄」が今はどうしても目立ちますが、「癒し」とは光り。それが明るい部分であればあるほど実は相反する部分=暗い闇があるものです。
「癒しの沖縄」を表現する説得力として闇の部分を描きだそうとホラーや犯罪を通した手法になりました。
そして今回の主題歌は沖縄出身の歌手ji ma maさんにラブレターを書きまして、作っていただいたのですが、ji ma maさんは脚本を読んで主題歌『アカリ』が出来たのだそうです。
『ひかり』ではなく『アカリ』なのだと。
暗闇の中であかりのついている家に帰るようなアカリであり、個人的な希望を意味するアカリのイメージがこの映画の脚本から出来たのだそうです。
そんな『アカリ』の曲に込められている思いは、映画とぴったりリンクして重要なシーンの最後にながれてきます。
田丸麻紀さんの最後の表情に特に注目して、『アカリ』も是非聞いてください。
(※明日は、田丸麻紀さん、尚玄さん、手島優さんへのインタビュー記事を掲載予定!/続く)

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映画『アコークロー』
6/9(土)より桜坂劇場(那覇市)で公開。
初日16:30の回上映後、
舞台挨拶予定あり:岸本司監督、吉田妙子、山城智二
主題歌『アカリ』を歌うji ma maのミニライブも予定有り
桜坂劇場 TEL:098-860-9555
URL:www.sakura-zaka.com/
『アコークロー』公式HP:
http://www.aco-crow.com/
(文:吉澤直美/編集+撮影:KUWA)
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